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カテゴリー「きりとり小説」の記事

きりとり小説  深秋

夏の間塀を緑色に覆い尽くした蔦たちは、今は自身を赤や黄色に染めている。
石畳の底からじわじわと這い上がってくるような冷気がそうさせるのだろうか。
ゆっくりと塗り替えられた葉は先端から根元にかけて美しいグラデーションをつくっていた。


ユカはアパートの2階から窓越しの光景をみつめている。

焦茶色をした木製の窓枠は少し塗装が剥げかかっている。
それはいくらか頼りなさがするものの、それこそ何十年、何百年と経っているであろう石造りの家々によく似合っている気がした。
ユカはこの古びた窓からの景色が好きだ。
特にこの季節はまるで絵画のようだとも思う。


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「はい、お待たせ」と言ってキョウコはユカに珈琲を差し出した。

そして自分の前にはなんだかよくわからない茶色の飲み物を置く。

「妊娠中はね、あまりカフェインを摂らない方がいいんだって。お酒もダメだし。」
ユカより5つ年上のキョウコは、カルシウムをたくさん摂取するために日本から煮干を送ってもらっただとか、まだこの時期は赤ちゃんの耳が出来上がってないけどもママがリラックスすることも大切なので最近クラシックを聴きはじめたなどと、いかにも本やネットで仕入れたような情報を口にした。
そしてまだぺったんこのお腹に手をあててそこに視線を落とした。

ユカは正直いって子供に興味はない。
他人の赤ちゃんに異常に反応して赤ちゃん言葉で話しかける大人を冷めた目で見ているものだ。
このキョウコにしても、少し型にはまりすぎなのではないかと思う・・・。


「珈琲のおかわり、どう?」
「あ、お願いします・・・」

ヨイショッ。

キョウコは口癖なのか、立ち上がるとき全く重くも見えないそのスリムな身体に不似合いな言葉を使う。
キッチンに向かうより先に、彼女はテーブルの上と窓辺に飾ったロウソクに火を灯した。

「この時期は日暮れが早くて嫌よねぇ。」

ロウソクの明かりで頬を柿色に染めたキョウコが振り返って言った。
嫌と言いながら口元にはわずかに笑みがある。そしてまた左手をお腹に添えた。

なんだか彼女の周りだけゆっくりと時間が流れているような気がした。


「また遊びにきてもいいですか?」

ユカは次の約束を交わしてアパートを出た後、北風に震える蔦壁の前を通る。
アパートを見上げると窓辺にはまだ炎が揺れていた。

彼女を包む全てのものが彼女に暖かく、優しくありますように・・・。

まったく柄にも無いことを思ってしまったものだと一人照れながら、ユカは頬までマフラーにうずめて帰り道を急いだ。



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きりとり小説  清爽-かわらか

初めて入ったBioのパン屋には会計待ちの列ができていた。
マイは迷ったあげく、チョコクロワッサンと何かナッツ系の実が入った甘そうなパンをひとつずつ買った。
それを持ってブロンズ像でできた噴水のある大きな広場までやってきた。


濃紺や緋色のテーブルクロスを広げたいくつものレストランがぐるりと広場を取り囲んでいる。
マイは華やぎからは遠ざかった一番隅っこのベンチに腰掛けた。
ときおり強く吹く風がオープンテラスで昼食をとる人々の話し声や食器の重なり合う音を運んできたが、それもまた風にのり、彼女の耳にかけた髪をわずかに揺らすだけで通り過ぎていく。
マイは地面に落ちた食事のおこぼれをせわしなくつつく鳩たちをしばし眺めた後、空を見上げた。
色が薄らいですっかり高くなってしまった秋の空を雲がやさしくなでつけている。
先ほど買ったパンのチョコレートを口の周りにたっぷりつけながら頬張る彼女に気をとめる人などいない。
隙間だらけの石畳に足を取られないよう少しずつ歩を進める老婦人の白髪を、やわらかな陽射しが透明に近いほどにまできらめかせていた。


02



なんて穏やかな昼下がりなんだろう。開放感に包まれながらマイは読みかけの本を取り出す。
数ページ読んだところでふと目を上げると、隣のベンチにグレーのジャケットを羽織ったサラリーマン風の男が座っていた。ソーセージの挟まったパンを食べている。
「もう1時半だけど仕事はないのだろうか?」
いや、そんな時間に縛られているのは日本人くらいか。マイはなんだかおかしくなって、ふっと息を吐き出した。


01


この後ちょっと文房具屋を覗いて用事をすませたらそのまま家に帰る予定だったけれど、お気に入りのカフェでもう少し本の続きを読むのもいいかもしれない。
今日はそうだな・・・。さっき甘いものを食べたから、珍しくブラックコーヒーにしようか。いつもはふわふわの泡が見た目にも触感的にもやわらかなカプチーノを頼むのだけれど。


パタンッと音がするほど勢いよく本を閉じると、マイはわざとらしいくらいに颯爽と風をきって歩き出した。




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